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2016年(平成28年)中学入試:国語でよく出た作品はこれ!(2014年~2016年)国語の頻出作品~入試傾向と問題分析(全国・広島版)

中学入試の国保の読解問題では、おもに「物語文(小説)」と「説明文(論説文)」が題材になります。2016年度はどのような作品がよくとり上げられたのでしょうか。それぞれについて調べてみました。

【物語文】 人物の心の動きを追う

今春の入試で複数の学校がとり上げた作品の一つが『サーカスの夜に』。両親と離ればなれになった13歳の少年が家族でみたサーカスの世界に引かれて入団、綱渡りを学びながら成長していく姿がえがかれています。
主人公がサーカスの道化師役の夫婦とともに老人ホームを慰問するという場面から出題したのが東京・鵬友学園女子中や兵庫・甲陽学院中など。病気で片足をうしなった老人を主人公がさすりつづけると、そのからだがやわらかくなっていくことを実感、いっしょに訪問した道化師役からねぎらいのことばを受け、悩みを抱える主人公だからこそ、人の心をなごませることができるとはげまされるというシーンです。2校とも「主人公が道化師役と衝動的に手をつなぎたくなった理由」を記述させました。
中学2年の息子(加奈太)と、その気持ちをとらえることができない父親(征人)が夏休みにおとずれた父親のふるさとでのできごとをえがいた『14歳の水平線』もよくとり上げられました。加奈太の視点と、かつて少年だった征人の視点が交互にとり入れられ、東京・筑波大学附属中や神奈川・浅野中、鹿児島のラ・サール中などが出題。各校で共通するのが登場人物の気持ちについての設問です。
浅野中は「もやもやする気持ち」でいる理由、ラ・サール中は「読まずにはいられない気分」になった理由などを記述、筑波大学附属中は登場人物の気持ちの動きや人物像について計8問、選択式で答えさせました。気持ちが動くきっかけになったことばや、できごとなどをしっかりとらえる力が求められた典型的な出題といえます。
広島地区では、最難関中の広島学院中では、中学入試では頻出である重松清の『赤ヘル1975』から出題されました。東京から広島に引っ越してきた主人公のマナブが、同じ中学に通う野球少年ヤスをはじめとする友達を通して、広島のことを理解していく物語です。
ノートルダム清心中は、菅原治子の『チンチン電車が走ってた』という小説からの出題でした。大人になった主人公のはる子が母の手紙を見て、小学校六年生の疎開先での出来事を思い出している様子が描かれています。疎開先に母親たちが面会に来るが、他の母親と自分の母親の自分の子どもへの対応の違いについて主人公の思いが描かれています。空欄補充、記号選択、記述のいずれも心情を問う問題が中心です。傍線の前後の内容からそのときの登場人物の状況から心情を読み取ることが大切です。

【説明文】 記述で問われる表現力

「日本人ならではの個性」「コミュニケーションにかんする問題点」など、説明文ではさまざまなテーマが出題されています。
16年度の入試で複数の学校がとり上げた作品の一つが『科学の考え方・学び方』。宇宙物理学者としても活躍する筆者が若い世代に対して「科学とは何か」をわかりやすい表現で解説しています。
作品は「私にとっての科学」「科学の考え方」「科学はどのように生まれたのか」「未来を担う君たちへ」といった章で構成され、大阪・清風中は科学者の仕事のおもしろさを伝える部分からの出題。問題の文書に傍線が引かれ、その部分についての正誤問題や字数を指定した書き抜きなどをもりこみました。説明文の典型的な出題例です。
東京・東洋英和女学院中学部では筆者の考えを読み取ったうえで「自分の言葉で説明する」という問題を出し、受験生の読解力はもちろん、表現力も問いました。
広島地区では、最難関中のノートルダム清心中では、茂木健一郎の『ひらめきの導火線』からの出題でした。オリジナルとは何か、日本の文化は外国文化の真似だといわれるが、果たしてそうなのかという論説文を読んで答える問題でした。
記号選択、記述はいずれも本文内容の理解です。指示語がどこを指すのかを的確に読み取り答えなければいけません。例年不適当なものを答えさせる問題が出題されますが、今年度は出題がありませんでした。
最難関中の広大附属中では。井坂洋子の『詩はあなたの隣にいる』からの出題でした。筆者は『朝礼 詩集』を発表したのち、30年以上にわたって数々の作品を発表してきた女性詩人です。本文は、数々の詩を書き、読んできた筆者が、自分にとって詩は「自分にめぐり会うことである」と考え、昭和に活躍した石垣りん氏の詩とエッセイを引用し、詩と実生活のつながりについて述べています。
今年の大問1では詩がテーマになっていました。大問が2つに減ったので文章が昨年度よりも少し長く、内容も少し読み取りにくいものとなっています。また、記号選択の問題が難しく、ここで時間をとられた受検生が多かったかもしれません。記号選択の問題では、答えの根拠となる部分を本文から探して解くという解き方が基本になりますが、問題によっては消去法を使うなど、工夫して解く必要があります

大学入試を視野に入れた出題も

入試でとり上げられやすい作品は大きく2種類。入試の前の夏休みごろまでに出た新刊と、新たに文庫になった作品です。中学の先生は夏休みに問題をつくることが多いようなので、秋以降に出版されたものはあまり出ないともいわれています
内容でめだつのは主人公の成長をえがいた作品です。ここ数年は「他者とのかかわり」に視点がおかれたものがトレンド。「自分はどう生きるか」といったテーマも増えており、今春の『<自分らしさ>って何だろう?』はその一例といえるかもしれません。
中学入試でも大学入試を念頭においた問題が増えています。いまの大学入試センター試験や難関の私立大学では、本文全体の内容を選択式で答える問題があります。傍線部分の前後だけを読めば対応できるというわけではなく、小手先の技術が通用しません
2020年度から、大学入試センター試験にかわる新たな試験がとり入れられます。中身ははっきりしていませんが、記述式で答える問題ももりこまれるため中学入試に影響が出るかもしれません。
ただ、どのような形式でも、読解力が欠かせないことにかわりはありません。選択式でも記述式でも対応できるよう、日ごろから幅広く読書をし、書く練習をしておく必要がありそうです。

書名 あらすじ・内容
なつかしい時間 長田弘 【岩波書店】 詩人でもある著者が、ことばがもつ可能性や限界について語る。言葉があらわすことができる「大切なもの」を考える1冊。
クラスメイト<後期> 森絵都 【偕成社】 中学1年生24人のクラスメイトそれぞれを主人公にした連作短編集で、前期・後期の全2巻。出会いやすれちがい、初恋のときめきや仲間はずれの不安などを描く。
あと少し、もう少し 瀬尾まいこ 【新潮社】 寄せ集めのメンバーと頼りない先生のもとで駅伝大会を目指す中学生を描く。走る順番に合わせて主人公がかわり、それぞれの思いがつづられている。
科学の考え方・学び方 池内了 【岩波書店】 「科学的に考える」とはどういうことか――研究者として活躍する筆者が、わかりやすいことばで解説。理科を学ぶ「入門書」としても読みつがれている。
サーカスの夜に 小川糸 【新潮社】 サーカスの魅力にひかれ、入団した主人公を描く長編小説。自分の病気のせいで家族が離ればなれになったと悩む少年が個性的な団員らと出会い、成長する。
<自分らしさ>って何だろう?――自分と向き合う心理学 榎本博明 【筑摩書房】 「なぜか自分が気になる」「こんなに人の目が気になるのはなぜか」。こんな問題を抱えがちな思春期の世代に、自分と向き合うヒントを紹介する。
物語ること、生きること 上橋菜穂子、瀧晴巳 【講談社】 『獣の奏者』シリーズなどで知られる上橋菜穂子さんが生い立ちから作家になるまでを語る作品。物語ができるまでの「舞台裏」を知ることができる。
「自分」の壁 養老孟司 【新潮社】 人生や仕事など、さまざまなテーマについて頭の中の「壁」をこえたとき、新たな次元の「思考」がみえてくる。そんな筆者の指摘がつまった1冊。
14歳の水平線 椰月美智子 【双葉社】 父親のふるさとの島を訪れた中2の主人公がキャンプで出会った少年たちと交流を深める。かつて14歳だった父親の視点もまじえ、物語が展開する。
小学五年生 重松清 【文芸春秋】 転校した友達に会いに出かけたり、母親の見舞いにバスで通ったり。5年生の男の子を主人公にした17編をおさめた短編集。
今ここにいるぼくらは 川端裕人 【集英社】 友人と川の源流をめざしたり、空を見上げてUFOに思いをはせたり。そんな小学生時代を過ごした主人公、大窪博士が成長するようすを描く。
おはようからおやすみまでの科学 佐倉統・古田ゆかり 【筑摩書房】 便利な生活は科学技術があって成り立っている。より幸せに暮らすために、生活と科学技術の関係を見直し、科学との付き合い方を探る。
願いながら、祈りながら 乾ルカ 【徳間書店】 北の大地にある中学校の分校で学ぶ1年生4人と3年生1人の物語。悩んだり、傷ついたりしながらも大人へと近づいて行く5人をつづる。

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